Y点は経営状況分析評点です。会社の決算報告書などをベースに作成された建設業の財務諸表をもとに算出されます。会社の経営状況がよいとされる会社にはいい点数がつき、そうでない会社は点数が低くなります。
つまりY点を上げれば会社の経営がよくなってきている証拠とも言えるのですが、数字の話だったりもするので、数字にアレルギーのある経営者さんにはどうすればいいのかわかりにくいこともあるようです。そこでポイントをわかりやすく解説してみようと思います。
借入金の返済
Y点をアップしていく上でまず取り組んでいただきたいのが借入金の返済です。借入金はY点の評価につながる様々な項目で悪影響を与えます。そのため借入金を圧縮することができればY点上昇に繋がります。
「お金は借りれるときに借りておく」とか、「金利の低いときに借りておく」とか、「銀行との付き合いがあるから借りておく」とか、いろいろなことを行ってくる経営者さんがいますが、経審の点数を上げていきたいのあればまずはここから着手するべきです。
借入金を返済するための具体的な方策
借入金を返済するためには以下の方法があります。
- 現預金などで余剰がある場合は借入金を繰り上げ返済していきます。また、定期預金などがある場合も解約して繰り上げ返済に充てます。
- 役員から会社に貸付がある場合は、資本金に繰り入れて増資します。役員から貸付があるかどうかは、会社の決算報告書の借入金の項目で確認ができます。
借入金返済で改善されるY点の各項目
借入金を返済するとY点の以下の項目が改善されます。
- 純支払利息比率
- 負債回転期間
- 総資本売上総利益率
- 自己資本比率
借入金の借り換え
借入金の返済が難しい場合は、借り換えを検討してみて下さい。金融機関との関係から借り換えは難しいと言われることがありますが、Y点において支払い金利を下げることは得点アップにつながりますので、ぜひご検討下さい。
借入金を借り換えるための具体的な方策
借入金の借り換えるためには以下の方法があります。
- 新たな金融機関と取引を始める。
- 既存の金融機関に交渉する。複数の借り入れを一本にまとめることなどを条件に借り換えが可能になることがあります。
- 制度融資を活用したり、日本政策金融公庫から借り入れたりすることで低金利の融資に借り換えをしていくことができます。
借入金の返済で改善されるY点の項目
借入金の返済で改善されるY点の項目は以下のとおりです。
- 純支払利息比率
自己資本を増やす
自己資本は資本金や利益剰余金などの合計の金額で借入金と異なり、返済する必要のない資本ですので、ここの金額は大きいほうがY点にいい影響が出ます。増資をしたり、当期純利益を出す経営を心がけると自己資本は増えてきます。また、自己資本が増えて、キャッシュが生まれるようであれば、借入金の返済に充てていくと更に効果的です。
自己資本を増やすための具体的な方策
自己資本を増やすためには以下の方法があります。
- 増資する
- 当期純利益を出す経営を続ける
自己資本を増やすことで改善されるY点の項目
- 自己資本対固定資産比率
- 自己資本比率
原価・経費を抑える
経審だと売上を上げること以上に大切とも言えるのが原価・経費を抑えた経営をすることです。利益を出す経営をすると改善していく項目は複数あります。ぜひ取り組んでいただきたい事項になってきます。
原価・経費を抑えるための具体的な方策
原価・経費を抑えるための具体的は方策には以下のようなものがあります。
- 見積もり・積算の徹底
- 仕入先の見直し
- 外注先の見直し
- 工期の短縮
- 人材育成
- 役員報酬の見直し
建設業の経営者さんの中には「お世話になった人だから・・・」とか「いつもよくしてくれるから・・・」という理由で新規の取引先を開拓しない方も多いです。悪いことだとは思いませんが自社のことを考えるのであれば、新規取引先の開拓には取り組んでいただいたほうがいいでしょう。
見積もり・積算の徹底、工期の短縮、人材育成は密接に関連していて、結局は優秀な人材がいると改善されていきます。社長自らでもいいですし、社員でもいいので、現場に出るだけでなく、デスクワークを学んだり、資格を取ったりすることで改善が期待できます。
また、決算で利益が出ると次年度の役員報酬を増やしがちですが、ぐっと我慢して利益を出していくことも大事です。もらいすぎているのであれば、減らすという選択肢も検討して下さい。自己資本を増やし、借入金を返済することで経審の点数があがります。役員報酬は比較的簡単に取り組めるので検討してみて下さい。
原価・経費を抑えることで改善されるY点の項目
- 総資本売上総利益率
- 売上高経常利益率
- 営業キャッシュフロー
- 利益剰余金
固定資産を減らす
建設業を営んでいるとある建設機械などの固定資産はある程度必要ですが、投資目的の不動産、社長が私用で使う外車、美術品などはY点の減少につながるので処分することをおすすめします。
建設機械についてはW点の加点対象になるので所有かリースでも構いませんが、加点対象の建設機械に該当しない機械・器具で使用頻度の低いものなどはレンタルにすると固定資産の圧縮につながります。
会社の規模が大きくなってくると自社ビルの購入などを検討するケースがあるかもしれませんが、経審の点数を上げるという意味ではおすすめできません。固定資産が増えて、減価償却費が増えるとX2の平均利益額は上昇するという側面はありますが、不要な固定資産を増やすことはマイナス面の作用の方が大きいと思います。ましてや借り入れをして事業と関係のない固定資産を購入するというのは経審的には悪影響となります。
固定資産を減らすための具体的な方策
固定資産を減らすための具体的な方策としては以下のようなものがあります。
- 遊休固定資産の売却
- 所有から賃貸へ
- 固定資産台帳の見直し
固定資産を減らすことで改善されるY点の項目
固定資産を減らすことでY点の以下の項目が改善されます。売却することでキャッシュが生まれるのであれば、それを借入金の返済などに充てていくと更に効果的です。
- 総資本売上総利益率
- 自己費本体固定資産比率
- 自己資本比率
売掛債権を減らす
完成工事未収入金等の売掛債権は売上としては計上されているけれど、現金化されていないため、自由に使うことのできる資産としては考えられず、経営上はいいことではありません。経審においても売掛債権が多いことはY点に悪影響を及ぼします。
回収サイトを短くして売掛債権はできるだけ早く回収することが重要なのですが既存の顧客のサイトを変えてもらうことはなかなか難しいのが実情です。新たな取引先の開拓や、売掛金の残高が少ない月に決算期を移動するなどの対策を講じていくことで改善させることも必要になってきます。
売掛債権を減らすための具体的な方策
売掛債権を減らす具体的な方策としては以下のようなものがあります。
- 債権回収サイトを短くする
- サイトの短い新たな取引先の開拓
- 決算期変更
決算日は会社設立当初に消費税の猶予期間を長くさせるためだけで決めてしまっていたり、なんとなく3月とか12月にしてしまっていたりすることがあります。資金繰り表などをきちんと作成していくことで売掛債権の残高が少ない月が明確になりますので、そこに決算日を変更するようにご検討下さい。
売掛債権を減らすことで改善されるY点の項目
- 総資本売上総利益率
- 自己資本比率
- 営業キャッシュフロー
棚卸資産を減らす
建設業者の場合は棚卸資産は原材料や未成工事支出金などの項目になります。在庫として残った原材料や期中に完成しなかった工事の原価が棚卸資産となります。未成工事が多いと金額が膨らむ傾向にあります。いずれは現金化される項目なのですが、現金化される前は自由に使える資産とはならないので、経営上は少ない方がいいとされています。経審でも、棚卸資産が多いと点数に悪影響を与えます。
棚卸資産を減らすための具体的な方策
- 在庫管理の徹底
- 工期の短縮
- 決算期変更
決算日において、材料や未成工事をいかに減らすかがポイントになってきます。必要以上に材料を持たないことや工期を短くして期中に完成させることなどを意識するといいでしょう。なお、これらは決算日時点での評価になります。テクニック的な話をすると、決算日時点で減ってればいいという考え方もできますので参考になさって下さい。
また、工事の多い繁忙期を決算日にしていると、必然的に未成工事は多くなります。こうした時期を避けて決算日を変更することも効果的です。
棚卸資産を減らすことで改善されるY点の項目
- 総資本売上総利益率
- 自己資本比率
- 営業キャッシュフロー
「Y点を上げるためのポイント」まとめ
ここがポイント!
- まずは借入金を減らすことを考える
- 原価・経費を削減して利益の出る体質にする
- 不必要な固定資産は持たない
- 回収サイトは短く、材料は必要最低限
- 決算期変更も検討する