知識及び技術又は技能の向上に関する建設工事の取組の状況(W10 )の項目は令和3年4月1日の法改正で新たに経審のW点に追加された項目です。建設業に従事する技術者がCPDを受け、技能者が建設キャリアアップシステムでレベルアップをすることで加点されます。
「技術者」と「技能者」、「CPD単位」と「技能レベル向上」
まずは、言葉の定義です。知識及び技術又は技能の向上に関する取組の状況(W10)では、「技術者」と「技能者」、「CPD単位」と「技能レベル向上」について理解しておく必要があります。
「技術者」と「技能者」
技術者
技術者は以前から経審では技術力(Z点)の部分で評価されてきた項目です。監理技術者、主任技術者、一級技士補、二級技士補が該当します。主に現場を管理するような仕事をする方が該当してきます。
技能者
技能者は主に現場作業をする方で、職人として活躍するような方です。経験を積み、資格を取得していくことで、職長となり、最終的には登録基幹技能者等として現場の仕事に従事します。
技術者であり技能者でもある人もいる
実務経験が10年以上ある方は主任技術者となることができるので、経験を積んだ技能者は技術者にもなりえます。また、技術者としての資格を持っていても現場の職人として働いている方は技能者にもなります。つまり技術者であり技能者でもある方がいることになります。こうした方は計算式に当てはめていくときに一人で技術者としても技能者としてもカウントされることになります。
「CPD単位」と「技能レベル向上」
CPD単位
CPDは継続教育のことです。技術者として資格を有している方であっても、継続して勉強していきましょうということです。経審では認定を受けた団体が講座を開設し、その口座を受講して単位を得ることで加点の対象となります。
技能レベル向上
何を持って技能レベルの向上とするのかについてですが、経審では建設キャリアアップシステムのレベルで判定することになっております。建設キャリアアップシステムでは技能者のレベルを1~4に分類しており、このレベルが上ったことをもって技能レベルの向上としています。
知識及び技術又は技能の向上に関する取組の状況(W10)の計算方法
計算式
W点の各項目は比較的計算がしやすいのですが、知識及び技術又は技能の向上に関する建設工事に従事する者の取組の状況(W10)については計算方法がかなり複雑です。まずは計算式ですが、以下のようになります。
(技術者/(技術者+技能者))×(CPD単位取得数/技術者)+(技能者/(技術者+技能者))×(技能レベル向上者数/(技能者-控除対象者数))
技術者は技術職員名簿に記載の技術者なので、これまでの経審を同じです。技能者については技能者名簿を作成して提出することになっています。「CPD単位取得数」と「技能レベル向上者数」については、別途算出します。
最終的な計算結果を以下の表に当てはめ、知識及び技術又は技能の向上に関する取組の状況(W10)を算出します。
知識及び技術又は技能の向上に関する取組の状況 | W10 |
10 | 10 |
9以上10未満 | 9 |
8以上9未満 | 8 |
7以上8未満 | 7 |
6以上7未満 | 6 |
5以上6未満 | 5 |
4以上5未満 | 4 |
3以上4未満 | 3 |
2以上3未満 | 2 |
1以上2未満 | 1 |
1未満 | 0 |
CPD単位取得数の計算方法
様々な団体がCPD認定団体として講座を開設しており、各団体の認定する単位数は様々です。そこで、経審の点数を計算する際には各団体で加点対象として認められる単位数の上限を決め、その上限が30になるように調整します。各団体の上限の単位数は以下のようになります。
CPD認定団体 | 満点30点換算 |
公益社団法人空気調和・衛生工学会 | 50 |
一般財団法人建設業振興基金 | 12 |
一般社団法人建設コンサルタンツ協会 | 50 |
一般社団法人交通工学研究会 | 50 |
公益社団法人地盤工学会 | 50 |
公益社団法人森林・自然環境技術教育研究センター | 20 |
公益社団法人全国上下水道コンサルタント協会 | 50 |
一般社団法人全国測量設計業協会連合会 | 20 |
一般社団法人全国土木施工管理技士会連合会 | 20 |
一般社団法人全日本建設技術協会 | 25 |
土質・地質技術者生涯学習協議会 | 50 |
公益社団法人土木学会 | 50 |
一般社団法人日本環境アセスメント協会 | 50 |
公益社団法人日本技術士会 | 50 |
公益社団法人日本建築士会連合会 | 12 |
公益社団法人日本造園学会 | 50 |
公益社団法人日本都市計画学会 | 50 |
公益社団法人農業農村工学会 | 50 |
一般社団法人日本建築士事務所協会連合会 | 12 |
公益社団法人日本建築家協会 | 12 |
一般社団法人日本建設業連合会 | 12 |
一般社団法人日本建築学会 | 12 |
一般社団法人建築設備技術者協会 | 12 |
一般社団法人電気設備学会 | 12 |
一般社団法人日本設備設計事務所協会連合会 | 12 |
公益財団法人建築技術教育普及センター | 12 |
一般社団法人日本建築構造技術者協会 | 12 |
例えば、公益社団法人空気調和・衛生工学会の開催する講習の場合は、50単位取得すると満点の30点となります。60単位取得しても30点です。25単位だと15点となります。また、一般財団法人建設業振興基金の開催する講習であれば12単位の取得で満点の30点が付きます。4単位しか取れていない場合は10点となります。
そして、技術者全員の平均点を計算します。その結果を以下の表に当てはめます。
基準日1年間における技術者1人当たりのCPD取得単位数 | 評点 |
30 | 10 |
27以上30未満 | 9 |
24以上27未満 | 9 |
21以上24未満 | 7 |
18以上21未満 | 6 |
15以上18未満 | 5 |
12以上15未満 | 4 |
9以上12未満 | 3 |
6以上9未満 | 2 |
3以上6未満 | 1 |
3未満 | 0 |
この表から算出された評点が当初の計算式のCPD取得単位数となります。
技能レベル向上者数の計算方法
技能レベル向上者数は建設キャリアアップシステムにおいてレベルアップした人がどれくらいいるかで評点が決まります。審査基準日前3年間で1以上レベルアップしている人をカウントし、以下の表に当てはめて算出をします。なお、基準日において既にレベル4と判定されている人については技能者数から控除します。
基準日前3年間における能力評価基準で1以上レベルアップした建設技能者の雇用状況 | 評点 |
15%以上 | 10 |
13.5%以上15%未満 | 9 |
12%以上13.5%未満 | 8 |
10.5%以上12%未満 | 7 |
9%以上10.5%未満 | 6 |
7.5%以上9%未満 | 5 |
6%以上7.5%未満 | 4 |
4.5%以上6%未満 | 3 |
3%以上4.5%未満 | 2 |
1.5%以上3%未満 | 1 |
1.5%未満 | 0 |
この表から算出された評点が当初の計算式の技能レベル向上者数となります。
知識及び技術又は技能の向上に関する取組の状況(W10)の算出方法
知識及び技術又は技能の向上に関する取組の状況(W10)の計算例
技術者3名、技能者10名の場合(技術者と技能者の重複はなし)で技術者のCPD取得平均単位が30、技能者の建設キャリアアップシステムのレベルアップ達成者が1名とする。
- CPD取得単位は満点の30なので評点は10
- 建設キャリアップシステムの達成者が1名(10%)なので評点は6
計算式に当てはめると以下のようになります。
(3/(3+10))×10+ (10/(3+10))×6=6.923
テーブルに当てはめるとW点で6点ということになります。W点の6点はP点に換算すると9点くらいになります。
W10の解説のまとめ
ここがポイント!
- 「技術者」「技能者」「CPD単位」「技能レベル向上」の意味を理解する
- CPD単位は30が満点。認定団体ごとに上限の単位が決まっていて上限を30に調整する
- 技能レベル向上は建設キャリアアップシステムでレベルアップしたかどうか
- 算出方法が複雑なのでシュミレーションをしてみないと何点出るかがわかりにくい