減価償却とは?
置場に建設した建物や、車両、重機器など、何年にもわたって継続して使用する大きな固定資産は買った年度に一括して経費として計上するわけではなく、使用する年数に応じて、毎年毎年経費として計上します。こうした制度を減価償却といいます。
減価償却費の大きな特徴として、支出を伴わないで経費を計上できるという点があります。支出を伴わないで経費を計上できるとはどういうことでしょうか?
シンプルな例を上げてみます。仕事で使うボールペンを買いました。100円でした。経費として計上します。経費100円ですね。現金を支払って経費として計上しています。これが減価償却費の場合、重機100万円を前年度に購入しました。すでに現金で支払い済みです。今年度の減価償却実施額は10万円でした。経費として10万円計上します。現金を支払わずに経費として計上しています。そうするとどうでしょう。経理上は現金が10万円増えるのと同じことになります。
ちょっと乱暴な例えですが、減価償却費について、概ね間違いではないと思っています。
減価償却費が経審に与える影響
経審ではいくつかの項目で減価償却費が影響を及ぼします。
X2自己資本額および平均利益額
自己資本額および平均利益額の平均利益額の算出に減価償却費が関連します。平均利益額=営業利益+減価償却費で計算するからです。この数値は大きいほうが加点となりますので、減価償却費をたくさん計上している会社はこの数値が上がり、経審の点数は高くなります。
Y経営状況分析
経営状況分析においても減価償却が影響する項目があります。
営業キャッシュフローが増える
営業キャッシュフローとは、1年間に本業で獲得したキャッシュのことです。経常利益に様々な項目の金額を足したり引いたりして計算するのですが、減価償却費はプラスの要素となります。つまり、多ければ加点されることになります。
自己資本対固定資産比率が下がる
こうしてみてみると、減価償却費が多ければ多いほど良さそうですが、デメリットはないのでしょうか?減価償却費は多ければ多いほどいいですが、減価償却費が増えるということは固定資産が増えるということを意味します。固定資産は流動性が低い資産(=現金化しにくい資産)なので、多すぎることは、現金が少なくなったり、負債が多かったりすることの裏返しとなることがあります。そのため固定資産が多いと数値が下がる項目もあります。
固定資産が多いと点数が下がる項目は、自己資本対固定資産比率です。購入した固定資産を自己資本でどれくらいまかなえるかを表す指数で、固定資産が多いと点数が下がります。
大切なのは購入する固定資産の中身
ここまででお伝えした通り、減価償却費が増えると、基本的には経審では加点になります。ただその裏返しで固定資産が増えると自己資本対固定資産比率が下がります。
建設業を営んでいると、車両や重機を購入したり、高額な器具や工具を購入したりということがあると思います。重機器の購入は別の項目で加点対象にもなっていますので、必要なものは購入をして、しっかりと減価償却をして経審でも加点しましょう。
ただし、無駄な固定資産の購入はダメです。投資物件の購入などは経審では評価されません。また無計画な購入もダメです。自己資本が少ない状態で借り入れを増やして重機を購入したりするのは、経審にいい結果を与えません。有利子負債の増加は経審の点数が下がる大きな要因です。
本当に必要なものを見極めて無理のない範囲で購入するようにしていけば、自ずと点数がついてくるはずです。
ここがポイント!
- 減価償却費が増えると経審の点数は上がる
- その反面、固定資産が増えると点数は下がる
- 事業に必要な重機等は購入してきちんと減価償却をする
- 不要な固定資産(投資目的など)は購入しない