東京都の経審の手順と各手続きにおける注意点

2018年3月28日

経審の大まかな手順

経営事項審査を受けたいけれど、何をどのようにしたらいいのかわからないというご相談をよくいただきます。公共工事の入札に参加するには経審を受ける必要があるのですが、中には、どうすれば経審を受けられるのかがわからないため、断念したという業者さんもおりました。そこで、経審を受けるまでの手順をわかりやすく、詳細にお伝えしていきます。

なお、ややこしいことに、経審を受けるための手順は各自治体で異なります。ネットで調べたけれど、違う自治体の申請方法だったために、実際は全然違って苦労したという話を聞いたこともあります。そこで、ここでは東京都知事の建設業許可業者さん向けに経営事項審査を受ける手順を解説します。他の自治体については別の機会にお伝えするようにいたしますので、ご了承ください。

経審の大まかな手順は以下の通りとなります。

  1. 決算変更届の提出
  2. 経営事項審査の予約
  3. 経営状況分析申請
  4. 経営事項審査申請

決算変更届の提出

決算変更届は経審を受ける受けないにかかわらず、建設業許可業者であれば、毎年、提出が必要になる届出です。決算変更届という届出なので、「何の変更なの?」と聞かれることがありますが、何かを変更したから届け出るわけではありません。「今までと事業年度が変わったから変更届を出す」と聞いたこともありますが、この理屈もよくはわかりません。他の自治体では「事業年度終了報告」と呼んでいるところもあり、こちらの表現の方がしっくりきます。

経審を受ける場合は、受けない場合と異なり、作成方法のルールが細かくなります。経審を受けるのであれば、まずは決算変更届から経審用に準備をする必要があるということを念頭に入れておいてください。

決算変更届で提出する書類

決算変更届で提出する書類は以下のものになります。

  • 別紙8変更届出書
  • 工事経歴書
  • 直前三年の工事施工金額
  • 財務諸表
  • 事業税納税証明書
  • 事業報告書

その他、変更があれば、以下の書類も提出します。

  • 使用人数
  • 令第三条の使用人の一覧表
  • 国家資格者等・監理技術者一覧表
  • 健康保険等の加入状況

別紙8の変更届出書

別紙8の変更届書は届出書の表紙になる部分です。届出者の項目に会社の実印で押印をします。法人番号を記載する項目がありますので、確認資料として法人番号の記載された用紙を提示します。税務署から届いた法人番号の通知のコピーでも構いませんし、法人番号検索サイト(http://www.houjin-bangou.nta.go.jp/)を印刷したものでも構いません。また、仮に忘れてしまったとしても、スマホなどで検索した画面を提示すればOKとなります。

決算変更届は毎年提出が必要ですが、提出を失念してしまっており、経審を受けるためにあわてて何期分かを提出する業者さんもいるかもしれません。その場合は、年度ごとに別紙8の変更届出書を用意し、決算変更届を作成します。以前はできたのですが、現在は1枚の変更届出書で複数期分をまとめて提出することはできません。

工事経歴書・直前三年の工事施工金額

工事経歴書と直前三年の工事施工金額については必ず税抜で作成をします。また工事経歴書については経審用の記載方法で作成する必要があります(後から経審用の工事経歴書を用意することもできますが、二度手間になるので最初から経審用の工事経歴書を準備しましょう)。

経審用の工事経歴書の作成方法

経審用の工事経歴書の作成は慣れていないと難しいです。都庁から発行されている説明書にも丁寧に書き方が記載されていますが、わかりにくく感じる人も多いようです。そこで、私がお客様に工事経歴書の原稿をお願いするときに伝えている記載方法を紹介します。

元請工事のみ、又は下請工事のみ施工している会社の場合
  1. 建設業許可を受けている各業種ごとに工事を分類し合計金額を算出する。さらにその7割の金額も算出しておく
  2. 請負金額の大きい順に記載をしていく
  3. 各業種の売上金額の7割の金額に達するまで記載をする。ただし、7割に達する前に軽微な工事(税込で建築一式は1500万円未満、建築一式以外の業種は500万円未満の工事)の記載が10件に達したら記載終了
元請と下請の両方の実績がある場合
  1. 建設業許可を受けている各業種ごとに工事を分類し合計金額を算出する。さらにその7割の金額も算出しておく
  2. 各業種ごとの元請工事の売上代金の合計額を算出し、さらにその7割の金額を計算しておく
  3. 元請工事の請負金額の高い順に工事経歴書に記載をしていく
  4. 元請工事の売上金額の7割の金額(2で算出した金額)に達するまで記載をする。ただし、7割に達する前に軽微な工事(税込で建築一式は1500万円未満、建築一式以外の業種は500万円未満の工事)の記載が10件に達したら記載終了
  5. 元請、下請にかかわらず施工金額の大きい順に記載を続ける。
  6. 売上金額の7割の金額(1で算出した金額)に達するまで記載をする。ただし、7割に達する前に軽微な工事(税込で建築一式は1500万円未満、建築一式以外の業種は500万円未満の工事)の記載が10件に達したら記載終了

財務諸表の作成方法

財務諸表には貸借対照表、損益計算書、完成工事原価報告書、株主資本等変動計算書、注記表が含まれます。経審を受ける場合は、工事経歴書、直前三年の工事施工金額同様、税抜きで作成しなければなりません。「税務申告で作成した決算報告書を添付すればいいの?」と聞かれることがありますが、建設業の決算変更届で提出する財務諸表は様式が別途決められているので、それを使用して作成しなければなりません。

税理士さんが作成する決算報告書とは勘定科目が異なっていることがあるので、建設業の様式に沿って項目の修正等をしながら作成をしていきます。

完成工事原価報告書

建設業の財務諸表には完成工事原価報告書という様式がついています。建設業に強い税理士さんが作成した決算報告書には完成工事原価がついていることがありますが、ほとんどの税理士さんは作成をしていません。完成工事原価報告書ではなく、製造原価報告書がついていたり、そもそも原価報告書を作成せず、販管費で工事原価を処理している先生もいます。

税務申告上はもちろんそれで構いません。ただし、建設業者として届け出る決算変更届では完成工事原価報告書を添付しなければなりません。

完成工事原価の項目

完成工事原価は以下の項目があります。

  • 材料費
  • 労務費
  • (うち労務外注費)
  • 外注費
  • 経費
  • (うちの件費)

材料費や経費はイメージしやすいと思いますが、労務費、労務外注費、外注費、経費のうちの人件費はわかりにくいと思いますので整理しておきます。

  • 労務費・・・会社の従業者で現場作業に従事する人への賃金等の支払い
  • 労務外注費・・・常用や人工などに対する支払い
  • 外注費・・・下請への支払い
  • 経費のうちの人件費・・・会社の従業者への支払いで労務費以外のもの。設計者、配置技術者、現場代理人、現場事務員等への賃金の支払い、福利厚生費などが含まれる

完成工事原価報告書や製造原価報告書がない決算報告書では上記の原価が販管費に計上されているため、そこから工事原価の部分を製造原価報告書に転記して完成させる必要があります。

「自社で作成しました」という財務諸表で空欄になっているものを拝見することが有りますが、これだと1円も掛けずに工事を請け負っていることになり、現実としては有りえません。また、経費のうちの人件費が0になっている財務諸表だと労働力だけを提供していることになり、工事を請け負っているとは言えなくなる可能性があります。労務費や経費のうちの人件費が0で外注費しか計上していない場合は、工事を丸投げしていることになります。

きちんとした知識を持って財務諸表を作成しないと、思わぬ誤解を生じる可能性もあるわけです。決算変更届は閲覧対象書類ですから誰でも見ることができます。誤解のないようにしっかりとしたものを作成したいところですね。

事業税納税証明書の取得方法

事業税の納税証明書は都税事務所で取得可能です。法人税や消費税の国税の納税証明書は管轄の税務署でしか取得できませんが、事業税の納税証明書は管轄の都税事務所だけでなく、どこの都税事務所でも取得が可能です。

ただし、個人事業主の場合は、8月半ばまでに提出する場合は申告所得税の「納税証明書(その2)」 (摘要欄に「事業所得金額」の記載 があるもの)を添付するとされています。期限内に経審を受ける事業主の方は事業税の納税証明書ではないので注意が必要となります。

経審の予約

東京都では経審は予約制です。決算変更届の受付が完了すると経審の予約が取れるようになります。予約は電話では受け付けていませんので窓口で対応してもらうことになります。

決算変更届は郵送でも可能ですが経審を受けるのであれば、窓口で提出して、受付になったら、その後に予約を取ってしまうことをおすすめします。予約を取った後の日程の変更は電話でも可能だからです。ただし、当日キャンセルの場合は、電話変更は不可となり、再度窓口で予約を取る必要が生じます。

経審の予約は建設業課の受付コーナーで行います。時期によっては1ヶ月以上先になることもあるので、余裕を持って予約を取りたいところです。経審の有効期間が切れてしまいそうだと、都庁に通って、キャンセル待ちをしなければならないということになりかねません。

経営状況分析申請

決算変更届と前後しても構いませんが、経審の審査日までに経営状況分析を受けていなければなりません。東京都の経審では経営状況分析の結果が出ていないと経審の予約日に申請に行っても審査を受けることはできません。

経営状況分析を受け付けている機関は全国に11あります。以下がその一覧です。どの機関でも構いませんので分析申請を行います。

ハイク行政書士法人ではワイズ公共データシステム株式会社に分析申請を依頼しております。ワイズ公共データシステム株式会社の提供している「電子申請支援システム」というソフトを使用させてもらっており、そのソフトを使用して経営状況分析がインターネットから申請できるからです。

また、ワイズ公共システム株式会社ではコンビニのネットプリントを利用して経営状況分析の結果を受領することも可能です。コンビニで支払いをして、すぐに結果の印刷が可能となりとても便利です。ネットプリントを利用すると以下の手順で経営状況分析通知を受領することができます。

  1. インターネットで経営状況分析を電子申請
  2. 分析の完了の連絡と支払い用のバーコードをメールで受け取る
  3. コンビニで分析申請の手数料を支払う
  4. 支払いが完了するとすぐにネットプリントの案内が届く
  5. コンビニでそのまま結果通知を印刷する

支払いと結果通知の受領がコンビニで一度にできてしまうので便利です。また、分析センターから郵送で受け取る場合の時間を短縮することができます。

分析にかかる日数は各分析機関によります。お急ぎプラン、標準プラン、ゆっくりプランなど幾つかのプランを用意している分析期間もあります。経審の審査日に間に合うように依頼をかけます。

ちなみに、ワイズ公共データシステム株式会社さんでは標準プランでも1〜2日程度で分析を終えてくれます。急いでいてもお急ぎプランにする必要がないくらい早く結果が受け取れるのでいつも助かっております。

経営事項審査申請

いよいよ経審の申請です。必要な書類を準備して申請に臨みます。東京都の場合、以下の書類が必要になります。

経審に必要な提出書類

  1. 経営事項審査確認書(東京都独自様式)
  2. 経営規模等評価申請書・総合評定請求書(いわゆる申請書)
  3. 工事種別完成工事高・工事種別元請完成工事高
  4. その他の審査項目(社会性等)
  5. 技術職員名簿
  6. 技術職員名簿に記入した職員の資格検定合格証等の写し
  7. 経営状況分析結果通知
  8. 継続雇用の適用を受けている技術職員名簿
  9. 建設機械の保有状況一覧表(東京都独自様式)
  10. 工事経歴書
  11. 経理状況の適正を確認した旨の書類

1,2,3,4,5,7は必須の書類です。他は該当する場合のみ提出します。10の工事経歴書は決算変更届に綴じたものを使用する場合は改めて用意する必要はございません。決算変更届で税込のものを作成していたり、経審用の記載をしていなかったり、建設業許可を受ける前の実績を提出する場合などに必要となります。

綴じ方は番号順に並べて申請書の左上の一ヵ所をステープラーで綴じます。ただし、6の資格検定合格証のみ別とじとなります。

経審に必要な裏付け資料等

申請の裏付け資料として以下の書類が必要になります。

  1. 建設業許可通知書又は許可証明書
  2. 建設業許可申請書
  3. 前回の経営事項審査申請書類
  4. 変更届出書副本
  5. 決算変更届
  6. 技術職員などの常勤性及び恒常的雇用関係の確認資料
  7. 技術者の資格検定合格証等
  8. 雇用保険
  9. 健康保険
  10. 厚生年金保険
  11. 建設業退職金共済制度
  12. 退職金一時金制度又は企業年金制度
  13. 法定外労働災害補償制度
  14. 防災協定
  15. 監査の受審状況
  16. 公認会計士等の数、二級登録経理試験合格者の数
  17. 研究開発費
  18. 建設機械の所有及びリース台数
  19. ISOの登録
  20. 消費税確定申告書
  21. 消費税納税証明書その1
  22. 契約書類

会社さんの状況によっては、上記の書類をすべて準備できるとは限りません。むしろ全部揃う会社の方が少ないと思います。経審は基本的には加点主義で、要件を満たして証明書類を準備できると加点となります。ただし、雇用保険、健康保険、厚生年金保険は未加入の場合は減点となります。

東京都では審査官と対面しての申請となります。準備した書類について質問を受けたり、不備を指摘されたりしながら審査を受けます。書類を提示する順番は決まっています。上記に記載したとおりに順番で揃えて持参しましょう。また、東京都の発行している「経営事項審査申請説明書」でも書類の並べ順を確認できます。書類などには、必要に応じて付箋を貼ったりしておくと審査がスムーズに進みます。不明なことが無いように、各書類を理解して、なにか聞かれたときにはきちんと説明できる人が申請に行くようにします。

無事に受付が済めば、審査手数料の支払いになります。不備があり、受付にならなかった場合は、書類を整え直して再来となります。

再来の方法

残念ながら書類に不足や不備があると、再来となってしまいます。再来の場合、予約などは不要です。受付カウンターに再来用の札があるのでその札を持って待機していると各時間帯の予約者の申請が終わった後に順次呼ばれます。

再来の審査は概ね10時、11時、14時、15時頃からスタートします。なお、再来の受付は15時までとなっております。

審査手数料の支払い

経審の申請が受付された後、審査手数料を支払います。1業種目は11,000円でその後は、1業種増えるごとに2,500円が加算されます。例えば、電気と電気通信で経審を受けた場合、審査手数料は13,500円となります。手数料を支払った後、受付に申請書類を提出し、副本を受領して申請が完了となります。

審査を受けて、手数料を支払って、受付に戻ってくる必要があります。あっちこっちに行くので最初は戸惑うかもしれませんが、慣れてしまえば大丈夫です!

結果通知の受領

東京都の経審の標準処理期間は22日となっております。「経営事項審査申請説明書」からはなぜか標準処理期間の記載が消えましたが、予約票には記載がされています。通知は会社に直接届きます。楽しみに待ちましょう。

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